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by catsleeps
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判例の位置づけ

判例タイムズ1268号135頁

espansさんの指摘は、
とても鋭くて勉強になります。

詳しくは、直接記事を読んでいただくとして。

刑訴の判例百選の中でも、
冒頭の「捜査の端緒と任意捜査」の項目の中に、
12個の判例が挙げられていますが、
その1番目が、最高裁の昭和51.3.16決定で、
任意処分の限界のリーディングケースとされています。

そのリーディングケースの前に、
写真撮影の昭和44年の最高裁の判決があるので、
両者の位置づけが問題となっていたところ、
今回の最高裁平成20.4.15決定がそれを明らかにした、
という流れになっているわけですよねえ。

で、espansさんの指摘のまとめの部分は次のとおり。
(改行は僕がしています)

******
上記のように、匿名コメントは、
「写真・ビデオ撮影の適法性判断基準も
昭和51年決定による」とまでは言い切っていませんが、
それでも昭和51年決定の考え方を否定しているわけではないので、
答案等での判断基準は、昭和51年決定、
すなわち「必要性・緊急性・相当性」でよいと思います。

すなわち、
捜査における写真・ビデオ撮影の適法性の問題も、
強制捜査と任意捜査の区別、
そして任意捜査の限界の問題に収斂した、
と考えてよいのではないでしょうか。

また、捜査のための写真・ビデオ撮影について、
どのような見解をとるかは自由だと思いますが、
「判例は写真・ビデオ撮影について、(昭和51年決定とは異なり)
慎重な姿勢を示している」との理解は、
今回の平成20年決定で否定された、
と考えてよいと思います。

むしろ、昭和51年決定と同一線上に
位置づけられるとみるべきでしょう。
******

実は、これと似たような話が、おとり捜査についての
最高裁平成16.7.12決定でもあるのです。

以下、試験委員になられた先生の受け売り。

前提として、昭和51.3.16決定は、
「必要性、緊急性なども考慮したうえ、
具体的状況のもとで相当と認められる限度において
許容される」という規範を立てています。

でも、実質的な基準としては、
「具体的状況の下で相当と認められるかどうか」
という利益衡量一本のみの規範になっています。

考慮要素の具体例が、必要性や緊急性だったりするだけで、
判例のあてはめを見ると、ほかにもいろいろと、
事案に応じた要素を認定しているのです。

ところで、平成16年の決定は、おとり捜査の定義を述べて上で、
「少なくとも、直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において、
通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に、
機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象に
おとり捜査を行うことは、刑訴法197条1項に基づく
任意捜査として許容される」としています。

ここで注目したいのは、
判例が「少なくとも」という言葉を使っている点。

判タの匿名コメントの引用を見てみましょう。

******
上記大法廷判決の解釈としては、
判文が『その許容される限度について考察すると、
・・・刑訴法218条2項のような場合のほか、
次のような場合には、・・・警察官による個人の容ぼう等の
撮影が許容されるものと解すべきである。』となっており、
これ以外に許されないと趣旨を示してるわけではない(以下省略)
******

上記平成16年決定の「少なくとも」という言葉の意味は、
匿名コメントが引用している「次のような場合には」と同じで、
例示しているわけなのです。

問題は、なにを受けて、例示しているのか。

平成16年決定は、明示していませんが、
それはおとり捜査が任意捜査の限界の問題として扱われている以上,
「少なくとも……におとり捜査は、(『具体的状況の下で相当と認められる』ので)」
という流れがあると読むべきだろう、というお話でした。

こういう視点で、任意捜査の限界の問題をまとめていくと、
意外といっぱいありそうに見える判例を、
スッキリ整理できて、試験直前に役に立ちました。

あとは、答案に書くとしたら、具体的な考慮要素を、
事案からどう引き出すかということになってくると思います。

法科大学院で、判例を学ぶ意味は、
このような判例の位置づけを考えることと、
実際に生の判例を読むことで、
判例があてはめの際にどういう要素に着目しているのかを、
理解していくところにあるんじゃないかなあ、
とかなんとか思いっきり思わナイト(極寒)。
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by catsleeps | 2008-07-18 00:04 | 刑事訴訟法のこととか